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ライブします

6月26日ブロークンスペース久々ライブします。「ビッグフィッシュ」がみたいです。 (BROKENSPACE 寺田友)

「とんかつダイアリー第二回」
 
『イイヤツ』という連中がいる。

他人が困っている事に気付くのは誰だってできるが、その他人に声をかける勇気は『イイヤツ』しか持っていない。 4,5人の人間が集まると『イイヤツ』が一人いる。

小さなバイト先にも、麻雀の面子の中にも、バンドのメンバーにも『イイヤツ』はいる。『ワルイヤツ』はそんなにはいない。大抵が陽気な酒好きである事を自認しており、何故か日本酒党が多い。煙草は吸わない。サッカーよりも野球が好きで野球よりも競馬を好む。他人によくオゴルが金持ちなわけじゃない。第一毎日同じ服を着ている。

愛すべき存在である。

『イイヤツ』がいないと世界は回らない。これは間違いない。


しかしだ。

『イイヤツ』は大抵、自分がユーモアのセンスを有していると思っている。
が、悲劇的な事にこれは全くの思い違いである。 『イイヤツ』で面白いヤツはまずいないと言っていい。 ところが本人が面白いと思い込んでしまっているから、持ち前のサービス精神で周りを困らせる。

以前働いていたバイト先に『イイヤツ』がいた。仮にOクンとしておこう。
Oクンは私より3つほど年下だったが仕事では1年以上の先輩だった。190cm近い大男だったがタレ目で可愛い顔をしていた。始めて仕事に行った日に彼はすぐに話しかけてくれた。仕事も率先して教えてくれた。競馬で少し儲けたと言ってはメシをオゴッてくれたりもした。


しかしOクンのお得意の挨拶にはどうにも閉口した。

バイトでどちらかが先にアガル時、彼はまったく真剣な顔で私の目から視線を外さず直立不動の姿勢をとりあきれる程に重々しく敬礼する。そして普段よりオクターブ低い声で


『お疲れ様であります。』


と言うのだ。よくしてくれるヤツを傷付けるわけにはいかない。私は覚悟を決めて

『お疲れであります。』 と返礼した。

嗚呼。

思い出すたび辛い思い出だが、彼が大学を卒業しそのバイトを辞めるまでの1年半、二人の挨拶は続いた。周りに人がいたりするとその恥ずかしさは筆舌に尽くし難いものがあったがOクンは全く平気のようだった。

これは悪口ではない。そのつもりで書いていない。彼は面倒なヤツだったが私はずっと彼を好きだった。地元の信用金庫に就職が決まり、バイトも最後という日、彼の敬礼は通常のそれより、さらに長く重々しいものだった。


『お世話になりました。お疲れ様であります。』



彼は最後までやり通した。



2004年6月2日/BROKENSPACE 寺田

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