「とんかつダイアリー第十回」
うまく眠ることができない。恋をしているみたいに。うつらうつらし始めると、太ももが痒くなる。お尻と腰の中間地点が痒くなる。二の腕が痒くなる。明かりをつけてジュウタンに目をこらすと憎き連中が我がモノ顔で這いずり回ってやがる。僕は毎日、大国の権力者のごとく終わらない殺戮を繰り返す。今の世の中でダニみたいなヤツよりも僕が嫌いなのはダニだ。
一つ買うより二つ買った方が割安の虫除けスプレーを二つ購入した客が 笑顔だったら。彼は明日、友人達と奥多摩にキャンプに出かけるのだろう。同じ商品をうつろな眼で購入する客がいたら。彼はスプレーを自宅 で噴霧するだろう。そして、それが僕だ。
酔っ払うという事が大切だ。酔っ払うと色んな痛みを束の間忘れる。痒みも。
死よりも病気は重い。と何かの本で読んだ。眠れない夜中に、そのことを時々思い出す。
たまりにたまった雑誌のせいなんだろう。それを片付けられない自分が悪いんだろう。自業自得は分かっている。虫除けスプレー買うくらいなら部屋を片付けろ!と僕は僕を怒鳴った。
『難解ゆえ放り出したる本の背を速読術で走り去る虫』
春が嫌いだ。夏が大嫌いだ。秋が少し好きだ。冬が好きだ。
共感できた少数派のあなたに質問。最近、視力が上がった気がしませんか?
どうか両親とあの娘が読んでませんように。早く冬が来ますように。ダニが死にますように。
来週末暇な人。泊りに来ない?ビールおごるよ。
2007年6月05日/BROKENSPACE 寺田
|